蓄電池ベンチャーのルネシスはこのほど、廃タイヤを活用した次世代蓄電池を開発した。丸紅ら18社と蓄電池を搭載した街路灯で実証試験を始めた。(本誌・土屋賢太)
同社が開発した廃タイヤを用いた次世代蓄電池
蓄電池開発が熱を帯びるなか、蓄電池ベンチャーのルネシス(佐賀県みやき町、山﨑貞充社長)は2024年7月、廃タイヤを用いて開発した次世代蓄電池で実証試験を始めると発表した。
同社は、廃棄されたタイヤを400℃で熱分解し、蓄電池の正・負極活物質材と正極導電材を抽出。これに硫黄系の正極と炭素系の負極のほか、洗剤や卵の殻などのイオン原料を組み合わせて蓄電池を開発した。廃タイヤの再資源化に繋がるうえ、希少金属が不要な点が特徴的で、同社は12年に研究に着手すると、20年頃に試作品を開発した。
同社の山﨑社長は、「廃タイヤをリサイクル(再資源化)することで資源の有効活用に繋がる。卵の殻などは自然由来のもので、使用後には作物の肥料になる」としたうえで、「蓄電池の安全性も追求している。電解液は非公開だが、不燃性の電解液を採用した」と話す。
今回の蓄電池はリチウムイオン蓄電池などと比べると、エネルギー密度が小さく耐久性に課題がある。それゆえ、同社は、定置用としての使用を想定しつつ、交換式にする考えである。
同社は24年7月下旬、丸紅や双日、エネオスマテリアル、楠本化成など計18社とみやき町内で蓄電池を搭載した街路灯で実証試験を開始した。10月下旬までの3ヵ月間に亘り、蓄電池の専用制御回路の動作確認などを検証する予定だ。
具体的には、消費電力15Wの街路灯に出力100Wの太陽光パネルと蓄電容量30Wh弱の今回の蓄電池を搭載、段階的に蓄電容量を拡張していく。最終的には蓄電容量を120Whまで増やし、8時間の連続稼働を目指す。
山㟢社長は、「今回の蓄電池は、希少金属が不要な分、大量生産できれば、市販の蓄電池よりも製造原価を落とせる可能性がある。今後も改良を続け、性能を引き上げたい」と意気込む。
同社は26年までに安全性の認証を取得し、27年までに実用化を目指す考えだ。現行の蓄電池の性能をもとに、1世帯あたり10kWh程の消費電力と試算すると、タイヤ10tから住宅42世帯分の電力需要を賄える蓄電池を製造できるという。
脱炭素社会の実現に向け、蓄電設備は欠かせない。ルネシスらの動きから目が離せなくなってきた。
写真は実証試験の街路灯